Wi-SUN FANマルチホップ無線ネットワークにおけるリアルタイム多層最適化映像伝送プラットフォーム

概要

IoT向け無線通信システムWi-SUN FANは、LPWA技術の中では比較的高速なデータレートで通信できるものの、スマートメータリングに代表される数値情報や文字列の伝送を主な用途としており、映像伝送のように高頻度かつ連続的なパケット送出を伴う通信は通信スループットに対して困難とされてきた。これは、CSMA/CA方式に起因するチャネルアクセスの競合やオーバーヘッドが、連続的なパケット伝送において致命的な遅延やパケット損失を招くためである。しかし、近年の映像圧縮技術の進展により、数十〜数百kbpsの低ビットレート通信における映像伝送の実現が期待されている。そこで本研究では、低消費電力無線マルチホップ規格である Wi-SUN FAN 上で H.265/HEVC によるリアルタイム映像伝送を実現することを目的とし、多層最適化プラットフォームを提案する。提案方式は PHY/MAC/RPL/IPv6 などの標準プロトコルスタックには変更を加えず、送受信端のソフトウェア処理のみで実現される点を特徴とする。
まず、客観的映像評価指標VMAF(Video Multi-Method Assessment Fusion)を用いて、RTP パケット損失が H.265 映像品質に与える影響を体系的に評価し、実用上許容可能な画質を維持するために必要な PDR(Packet Delivery Ratio:パケット到達率)を明らかにする。そのうえで、1.NAL削減、2.パケット集約、3.信頼性制約付きレート設計、これら3つの機構からなる多層最適化を導入する。
提案方式を適用した評価では、NAL削減とパケット集約の併用により、画質劣化なく無線区間のパケット数を最大約84.5%削減できることをシミュレーションにより示した。さらに、NVIDIA Jetson NanoとWi-SUN FANモジュールからなる実機評価システムにおいても、30〜50 kbpsの映像を安定して伝送できることを確認し、既存のWi-SUN FANインフラを活用した災害・設備監視システム等の実現可能性を示した。

研究者

氏名 コース 研究室 役職/学年
額見怜央 通信情報システムコース 原田研究室 博士2回生
原田博司 通信情報システムコース 原田研究室 教授
正木弘子 通信情報システムコース 原田研究室 研究員