推薦システムとは,膨大な候補アイテム集合の中から,ユーザの過去の行動履歴や文脈情報,ユーザ/アイテム属性にもとづいて,各ユーザに適したアイテムを予測・提示するための情報フィルタリング技術である。協調フィルタリング(Collaborative Filtering; CF)は,ユーザとアイテムの過去のインタラクションにもとづきユーザ嗜好を推定する,推薦システムにおける基本的なパラダイムの一つである。近年,複雑なグラフ構造を効果的にモデル化できることから,グラフニューラルネットワーク(Graph Neural Networks; GNN)が CF 研究において大きな注目を集めている。しかしながら,既存の GNN ベースの CF 手法は,多くの場合,局所構造に偏ったモデリングと埋め込み表現の歪みという二つの重大な制約に悩まされている。
本研究では,これらの制約を克服するため,ロングテール分布を特徴とする CF タスク向けに設計した新たなアーキテクチャである双曲グラフトランスフォーマ(Hyperbolic Graph Transformer; Hgformer)を提案する。提案手法は,(1) 双曲多様体上で全ての演算を行うことで局所近傍関係を高精度に捉える Local Hyperbolic Graph Convolutional Network(LHGCN),および (2) クロスアテンション機構を組み込むことで大域的なユーザ–アイテム相互作用を効果的にモデル化する Hyperbolic Transformer から構成される。さらに,大規模データセットに対するスケーラビリティを確保するため,射影双曲カーネルとそれにもとづく不偏な線形時間双曲アテンション近似を導入し,当該近似誤差に対する理論的な上界を導出する。さまざまなベンチマークデータセットにおける広範な実験により,提案する Hgformer が既存の最先端 CF 手法を大きく上回る性能を示し,ロングテール推薦の課題に対して有効であることを確認した。

・ECサイトやオンラインマーケットプレイスにおけるロングテール商品推薦
(ニッチ商品や在庫の長期滞留を防ぐためのパーソナライズ推薦)
・動画配信・音楽ストリーミングサービスにおけるコンテンツ推薦
(人気作品だけでなくマイナー作品の発掘・レコメンド)
・ニュースサイトやWebメディアにおける記事推薦
(ユーザ興味に応じたロングテール記事の提示)
・レコメンドウィジェットやオンライン広告におけるパーソナライズド推薦
(クリック履歴・閲覧履歴にもとづく大規模ユーザ–アイテムグラフの活用)
| 氏名 | コース | 研究室 | 役職/学年 |
|---|---|---|---|
| 李 星潤(XingRun Li) | 数理工学コース | 最適化数理 | 修士2回生 |
| 楊 昕 (Xin Yang) | その他の専攻・大学 | 社会工学域 | 博士3回生 |
| 常 恒 (Heng Chang) | その他の専攻・大学 | その他: その他 | |
| 福田 エレン 秀美 (Ellen Hidemi Fukuda) | 数理工学コース | 最適化数理 | 准教授 |