野生動物に装着したカメラデータからの周辺環境情報の評価:機械学習によるフィールド映像の解析

概要

野生動物の生態研究では,観察個体にセンサを取り付けて動きや周辺環境を観察するバイオロギングが普及している.動物に装着したカメラも,経験環境の視覚的なデータを得られるとして高い注目を集めている.しかし,収集された膨大な画像・映像から意味のある情報を手動で取得するための,人的・時間的コストが問題となっている.生態研究への適用例が既に多数ある固定・設置型のカメラでは,機械学習による自動分類等の実用化が行われている.それに対して,動物に装着したカメラの適用例はまだ少ない上,装着個体の動きによるノイズが大きく,いまだ人による分類・評価が一般的である.本研究ではこの問題を解決するため,モンゴルに生息する移動性の哺乳類モウコガゼルから収集した映像を対象として,自動的に周辺環境を評価する手法の開発を試みた.機械学習による画像解析を多段的に用いて,映像から周辺の植物量やRGB植生指標をはじめとする環境の多角的な定量化を行った.

産業界への展開例・適用分野

近年,温暖化や人間活動の変化により国内外で人間と野生動物の間での軋轢が増加している.すでに野生動物の生態を把握することで,これらの軋轢を解消する試みが行われており,装着型カメラも軋轢発生の前後を記録する重要なツールである.本研究の手法により装着型カメラの活用が促進されることで,より詳細に軋轢発生のメカニズムを調査し,具体的な対策を立てることが可能になると期待できる.また多様な動物種・環境に適用できるよう改良することで,現状個々の研究プロジェクトや行政機関等が蓄えているデータを統一的に扱えるようになり,局所的な活用にとどまる装着カメラのデータを広域的な比較に活用できると考えられる.さらに,動きのあるカメラから得られた映像を解析して環境を把握するという本手法の一連のプロセスは,野生動物だけでなく,人や車両などに装着したカメラの解析にも応用できる.そのため,本手法の根幹はインフラの保守管理・防犯など様々な用途への展開も考えられる.

研究者

氏名 コース 研究室 役職/学年
永谷黎 社会情報学コース 生物圏情報学講座 博士1回生
小山里奈 社会情報学コース 生物圏情報学講座 准教授
伊藤健彦 その他の専攻・大学 北海道立総合研究機構・麻布大学 研究員
UUGANBAYAR Munkhbat その他の専攻・大学 WWFモンゴル その他: その他
CHIMEDDORJ Buyanaa その他の専攻・大学 WWFモンゴル その他: その他