高い分権性が51%攻撃耐性を必ずしも上げるとは限らない

概要

Nakamoto Consensusを採用したブロックチェーン(例えばBitcoin)では,リソースの分布がより均等である,すなわち分権性が高いほど,51%攻撃への耐性が向上すると一般的に考えられています.これは,攻撃者が必要な資源を集めることが難しくなるためです.しかし,分権化が進むと,51%攻撃への耐性を低下させるメカニズムが存在することを我々は発見しました.それは,ステイルブロックの数が増加し,それによって51%攻撃に必要なリソースの割合が低下するというものです.その結果,高い分権性がセキュリティを向上させる一方で,逆にセキュリティを低下させるという二つの相反する効果が生じます.

本論文では,これらの相反するメカニズムを考慮に入れながら,分権性が51%攻撃に対するセキュリティにどのように影響を与えるかを検討します.具体的には,分権性パラメータを含むステイルブロック率の公式を導出し,シミュレーションを通じてそれを検証します.さらに,Albrechtら(S&P '24)が提案した確率的な汚染モデルを用いて,分権性の度合いに基づくブロックチェーンが安全である確率を計算します.我々の研究結果は,「分権化が進むほどセキュリティが向上する」という従来の仮定に挑戦し,セキュリティを最大化するための最適な分権製のレベルが存在することを示します.

産業界への展開例・適用分野

金融,医療,サプライチェーン

研究者

氏名 コース 研究室 役職/学年
中井 大志 社会情報学コース 中井大志 博士1回生
首藤一幸 学術情報メディアセンター 首藤研究室 教授