レーザーをその波長における吸収係数の大きい液体に集光すると,光が液体中の集光領域に吸収されることで局所的な温度分布が形成される.液体中に分散するマイクロ・ナノ粒子はその温度勾配に沿って運動することが知られており,特に,流路壁面の近傍では粒子が集光領域に捕捉される場合がある.この捕捉現象は光熱捕捉(optothermal trap)と呼ばれ,温度勾配に沿った広い捕捉範囲を確保できることから,非接触・非侵襲な微小物体操作への応用が期待されている.一方で,そのメカニズムには熱泳動,熱浸透流,熱対流という3つの熱流体現象が絡み合っていると考えられており、特に熱泳動と熱浸透流のメカニズムの理解が不十分であることおよびこの2つの現象の切り分けが難しいため,光熱捕捉の原理解明に至っていない現状がある.本研究では光熱捕捉メカニズム解明のため特に熱泳動と熱浸透流の切り分けに着目した.具体的には,熱対流の影響が抑えられる条件下において,壁面付近とバルク部分それぞれにおける温度勾配に沿った粒子運動を観察・比較することで壁面近傍でのすべり流れである熱浸透流が光熱捕捉に及ぼす影響を実験的に検討した.
本研究の対象である光熱捕捉は非接触・非侵襲な微小物体操作を可能とする.光熱捕捉メカニズムの解明が進むことで,温度の影響を受けやすい細胞や生体分子の運動の制御などをより高精度で行うことが可能となることから,特にナノ工学・生命科学分野での応用が期待される.
氏名 | コース | 研究室 | 役職/学年 |
---|---|---|---|
鈴木翔太 | 先端数理科学コース | 応用数理科学研究室 | 修士1回生 |
辻徹郎 | 先端数理科学コース | 応用数理科学研究室 | 准教授 |
田口智清 | 先端数理科学コース | 応用数理科学研究室 | 教授 |