マイクロ・ナノスケールの微小流路内の流体では,流体と壁面の相対速度の接線方向成分が0にならず,すべりが生じることが知られている.特に,壁面の温度勾配に起因する熱すべりの場合,すべりの特性は壁面の性質(例えば流体分子の壁面に対する親和性)によって影響を受ける.本研究では,流体が希薄な気体である場合(分子気体)に注目して,熱遷移流に対して壁面の性質がどのように影響するかについて調べることを目的とする.熱遷移流とは,壁面に温度勾配が存在するとき,気体の流れが低温側から高温側へ向かう方向に誘起される流れである.本研究では,壁面の性質(気体分子と壁面の親和性など)を壁面近傍でのみ働くポテンシャルによって表現し,壁面の性質が分子気体の熱すべりに与える影響を調べた.解析の結果,壁面から気体分子に働く外力が引力の場合と斥力の場合で,流れの向きが反転することがわかった.
熱誘起型のポンプなどの駆動部を持たない流体輸送技術や,マイクロデバイスの熱流体解析に応用できる.例えば,半導体など微細構造を有するデバイスで生じるナノスケールの発熱おいて,熱流動場の評価や放熱設計に応用可能である.
氏名 | コース | 研究室 | 役職/学年 |
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田北 晃一郎 | 先端数理科学コース | 応用数理科学分野 | 修士2回生 |
辻 徹郎 | 先端数理科学コース | 応用数理科学分野 | 准教授 |
田口 智清 | 先端数理科学コース | 応用数理科学分野 | 教授 |