国内農村地域における地域住民のDAOの活用意向と普及に向けた課題
Exploring the utilization intentions of local residents for DAO and challenges for adoption and diffusion in rural areas in Japan

概要

 現在国内農村地域では、少子高齢化・過疎化・住民同士の繋がりの希薄化に伴い、地域活動への参加者が減少している。単独の農村地域での集落の維持が困難な状況に陥っていることから、昨今地域の存続に向けた取り組みとして、地域に居住していない関係人口の活用に注目が集まっている。先進的な農村地域では、Web3.0技術であるDAO(Decentralized Autonomous Organization,分散型自立組織)を活用した関係人口創出の取り組みが進められている。DAOの導入によって、オンライン空間に関係人口との交流の場が創出され、地域にとっては地域の担い手増加に期待できる。また、DAO内での地域住民と関係人口とのトークンを活用した投票の実施により、広く地域住民の声を拾うことが可能となるほか、外部の意見も地域の意思決定に反映させることが可能となる。
 しかしながら、従来の農村地域では一部の男性の農業者によって地域運営がトップダウン式で為されてきたほか、外部人材の介入や協働の必要性を感じない住民も存在する。そのため、 DAOの導入は農村社会構造に変化を与える可能性があるほか、農村地域では都市と比較し高齢化率が高いため、最新技術の普及スピードが遅いといった課題も存在する。
 現在発表者は三重県御浜町において、農村地域特有の課題を踏まえつつ、地域課題解決に向けたDAOの導入を進めている。本発表では、地域住民のDAOの導入意向に関する調査及び今後の普及に向けた活動について報告する。

産業界への展開例・適用分野

本研究は今後DAOを導入予定の農村地域だけでなく、産業界に対しても以下の展開が可能と考えている。
・DAOは企業におけるプロジェクト型組織と類似していることから、多様なステークホルダーが協働する際や、合同で意思決定を実施する際に生じる課題を提供する。
・新技術の導入時に、ユーザー個々人やコミュニティで生じる活用に関する課題だけでなく、導入するコミュニティ全体に与えうる影響の調査の必要性を提示する。特に国内農村地域のように高齢化率が高いコミュニティへの新技術導入に伴う課題を提供する。

研究者

氏名 コース 研究室 役職/学年
田中 初 プラットフォーム学卓越大学院プログラム 農村計画学研究室 博士1回生
星野 敏 その他の専攻・大学 京都大学大学院 地球環境学堂 持続的農村開発論分野 教授
鬼塚 健一郎 その他の専攻・大学 京都大学大学院 地球環境学堂 持続的農村開発論分野 准教授