東日本大震災が記憶に新しいように、日本では数年から数十年に一度巨大地震が発生し、そのたびに莫大な人的・物的被害をもたらしている。今後数十年以内に南海トラフ地震や首都直下型地震の発生が確実視されている中、大地震発生予測は被害を抑えるためにも重要である。
一方で大地震発生の数日前から数十分前にかけて、地震が発生する領域上の電離圏に異常が発生する可能性が示唆されている。その様態は電子数密度の変化、移動性電離圏擾乱(TID)の伝搬速度変化など様々なものが提案されているが、その再現性やメカニズムは未だ明らかになっていない。今後電離圏異常の詳細なメカニズムを解明し大地震の予測システムを作るためには、精度の良い情報をリアルタイムでできるほどの低時間コストで推定できることが重要である。
本発表では、GNSS衛星から得られるTECデータから高解像度な電離圏トモグラフィをリアルタイムで実現する手法について提案し、この手法が電離圏の状態変化を捉えることができることを確かめる。国土地理院が運営するGEONETから得られるGNSS-TECデータは1300以上の受信局からのデータが30秒間隔で記録されている。このGNSSデータの量は莫大であり、リアルタイムで電離圏トモグラフィを通して三次元データを推定するためには、アルゴリズムに工夫が必要である。本研究ではデータの疎行列性、時間的連続性、解像度連続性の3つの特徴に着目し、これらの特徴を活かした解法アルゴリズムを開発した。
・地震と電離圏異常の関連を探るなど地球電磁気学のデータベースとして利用できるようにすること・予測に用いることができるようにすることを最終的な目標としている。
・電離圏電子数密度はGPSなどの測位システムに影響を与えるため、その推定・予測はこういったシステムのさらなる精度向上に貢献できると考えられる。
氏名 | コース | 研究室 | 役職/学年 |
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米山慧 | 数理工学コース | 物理統計学分野 | 修士1回生 |
梅野健 | 数理工学コース | 物理統計学分野 | 教授 |