InQuIR: 量子インターコネクトのためのプログラム中間表現
InQuIR: an Intermediate Representation for Interconnected Quantum Computers

概要

 単一の量子プロセッサは様々な物理的制約によってスケーラビリティに問題を抱えており、量子計算機の大規模化の障害となっている。
これを解決するための技術として、複数の量子プロセッサを接続して量子計算機クラスタを構築する量子インターコネクト技術が注目されており、その上で動く量子プログラムのための分散量子コンパイラの開発も始まってきている。一方で、量子インターコネクト上で動作する分散量子プログラムを記述ないし解析するための形式的なプログラム表現は研究がほとんど行われていない。
 本研究では量子インターコネクトのためのプログラム中間表現である InQuIR を提案する。InQuIR は形式的な文法および意味論を持ち、分散量子プログラムの複雑な振る舞いを数学的に議論することができる。また、分散量子コンパイラの対象言語として InQuIR を出力することで、コンパイルされたプログラムの再利用性が高まるだけでなく、InQuIR 上での同一指標でのリソース解析が行えるようになる。本研究では実際に InQuIR プログラムを出力する簡単なコンパイラを実装し、出力されたプログラムの性能評価を行えることを示す。最後に、InQuIR のプログラム例を通じて分散計算特有のデッドロックなどの問題を示した後、それを検証するためのプログラム静的解析手法に関する議論を行う。

産業界への展開例・適用分野

量子計算技術は、例えば量子科学計算などで古典計算機よりも優れた性能を示しうるものであり、製薬などの分野を発展させる可能性を秘めている。そのような量子技術を社会実装するためには、大規模量子計算につながる量子インターコネクト技術は、どの量子アルゴリズムを動かす際にも避けては通れない技術である。したがって本研究が提案するような量子インターコネクト上で動作するプログラムを記述・解析するためのプログラミング基盤を開発することによって、分散量子ソフトウェアの開発をも加速させ、量子計算技術の実社会応用を近づけさせられると考えている。また、実際に量子アルゴリズムを大規模な計算機で動かした際のコストを見積もることができるようになれば、量子計算技術を社会応用するために求められる量子計算機の能力を見積もることもできる。これらを踏まえれば、量子計算機を開発する側・使う側のどちらの場合にも本研究は利用できるのではないかと考えている。

研究者

氏名 専攻 研究室 役職/学年
脇坂遼 通信情報システム専攻 五十嵐・末永研究室 博士1回生
西尾真 その他の専攻・大学 総合研究大学院大学 複合科学研究科 情報学専攻 情報基礎科学分野 博士1回生