多様性に富む微生物と人間との関わりは深く,発酵食品の製造やエネルギー生産など,たくさんの場面で我々の生活を支えている.一方,感染症や食中毒など,微生物による被害も多い.そうした被害を防ぎ,有効利用を促進するためには「微生物検査」というプロセスが必要とされる.ここでは古くから,寒天培地上で微生物を培養し目視で観察する「寒天培養法」などが用いられている.しかし,コロニー形成に時間がかかり,検査に24時間以上を要する問題がある.また,この培養作業には煩雑な操作が必要であることも技術的な課題となっている.
我々は,微生物の誘電特性が周辺の培地(主に水分子)と異なることに着想を得た,65-GHz帯で動作する発振回路からなる近接型誘電アレイセンサを独自に開発した.このセンサは,1素子が110×50 µmの大きさであり,微生物が増殖する際にはこの表面に局在している電場内で,水が微生物に置き換わる様子をセンシングすることが可能である.また,この素子は3 mm四方に1,488個並んでおり,微生物の増殖の様子や動きを画像化することも可能である.本発表では,この誘電センサの特徴と微生物増殖モニタリングの仕組みを紹介するとともに,現在の課題や将来展望している検査システムについて触れる.
食品分野や医療分野における微生物検査への適用及び展開が期待される.
氏名 | 専攻 | 研究室 | 役職/学年 |
---|---|---|---|
山重貴久 | プラットフォーム学卓越大学院プログラム: プラットフォーム学卓越大学院プログラム | 農学研究科生物センシング工学研究室 | 博士1回生 |
近藤直 | その他の専攻・大学 | 農学研究科生物センシング工学研究室 | 教授 |
小川雄一 | その他の専攻・大学 | 農学研究科生物センシング工学研究室 | 准教授 |