地球の大気上層に広がる電離圏は様々な自然現象により擾乱するが,地震発生に先行する異常も報告されている.電離圏の状態を表すTECデータは,GNSS衛星から発信される電波を日本全国約1300局の電子基準点で受信することによって得られる.このTECデータに相関解析を適用することでノイズを除去した異常を見ることができる.電離圏異常は時間経過に伴って伝搬することが知られているが,地震発生前に伝搬速度が減速することが複数の地震について報告されている.
本研究では2018年6月に発生した大阪北部地震発生前における電離圏異常の伝搬減速を示した.当該地震発生に先行する異常として,数時間単位の短期的異常や,電離圏での異常を報告したのは初めてであり,電離圏異常の伝搬減速という現象はMw 5.6という規模の地震に対しても発生することが分かった.
高密度に配置された日本のGNSS受信機ネットワークを背景に,地震予測・警報システムの構築が期待される.工場や発電所などにおける防災・減災に繋がる.
氏名 | 専攻 | 研究室 | 役職/学年 |
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中林 亮 | 数理工学専攻 | 梅野研究室 | 修士2回生 |
梅野 健 | 数理工学専攻 | 梅野研究室 | 教授 |
https://agupubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/2017JA023921