食物網を介した放射性セシウム移行の包括的な動態解明
Comprehensive dynamics of radiocesium transfer through the food webs

概要

2011年3月に発生した東京電力福島第一原子力発電所の事故によって,複数核種,多量の放射性物質が周辺地域に飛散した.放出された主要な核種の一つである放射性セシウム137は,放射壊変により存在量が半分になるまでの時間である物理学的半減期が約30.2年と長く,事故から10年経過時点においても初期量の約80%が環境に残存する.被曝による人間の健康上の懸念という観点とともに,水産物や農産物といった資源の保全という観点からも放射性セシウムの環境動態は重要なモニタリング対象となっている.本研究では福島の生態系において森林域から生活圏に生物群集の食物網を介して移行・分散する放射性セシウムの量と経路を観測で示すことで各生物種が持つ放射性セシウム濃度特性の要因を検証し,放射線生態リスク評価に応用する.

産業界への展開例・適用分野

本研究は,重大な放射能災害による被害を受けた地域において,森林域と生活圏を結ぶ水系の生活利用の判断に関して信頼性のあるデータを提供する.今後の森林除染や被曝防護のための効果的な方針を示すともに,同様の放射能災害が起こった際の水産物や農産物といった資源の保全に寄与する.これらの情報は,今後の住民の帰還や社会の復興,放射線生態リスク評価,さらに中山間地生活圏の持続的な維持と森林の管理の上で重要である.

研究者

氏名 専攻 研究室 役職/学年
角間海七渡 プラットフォーム学卓越大学院プログラム: プラットフォーム学卓越大学院プログラム 生物環境情報学分野 博士1回生
大手信人 社会情報学専攻 生物圏情報学講座 教授