分光分析では一般的に,狭い測定窓を用いた測定範囲の走査によって測定感度を犠牲にして高解像度スペクトルを得る.本研究では,帯観測という低解像度観測手法を設計し,これとLasso推定とを組み合わせたBM-lassoを提案した.BM-lassoの性能を確率伝搬法と密度発展法とに基づく解析及び数値シミュレーションによって評価したところ,提案手法は従来観測手法に比べてより高精度,高感度,高特異度を示すことが明らかとなった.
本研究成果は,①スパースなスペクトル(=多くの信号値が0であるような信号)を計測対象とし,②測定プロセスの設計や改変が困難である測定系に対して適用することで,簡便に測定精度・感度を向上させることが期待できる.具体例としては,最も汎用されている質量分析装置である四重極質量分析計の性能改善を装置の物理的改変を必要とせずに行うことができる.
なお,本研究成果は京都大学に権利承継の上で特許出願済みである(特願2021-138179号).
氏名 | 専攻 | 研究室 | 役職/学年 |
---|---|---|---|
上村京也 | システム科学専攻 | 情報数理システム分野 | 博士2回生 |
小渕智之 | システム科学専攻 | 情報数理システム分野 | 准教授 |
田中利幸 | システム科学専攻 | 情報数理システム分野 | 教授 |