主体感を伴う組み立て作業支援に向けた インタラクション認識
Interaction Recognition for Supporting Assembly Workers while Maintaining Their Autonomy

概要

 本研究では,組み立て作業において作業者の主体感を損なわないような支援方式をデザインし,これを実現するために必要な,適切な支援タイミングの推定手法を提案する.
 主体感を損なわない支援に有用な観点として,(1)展望的であること,(2)作業者始動であることを取り上げる.(1)は,作業者に少し先にとるべき行動の見通しを持たせるという観点である.ある工程の完了間際に次の工程が何であるかを示唆することで,作業者が自信をもって主体的に作業を進めることができる.(2)は,作業者が行動してから支援するという観点である.作業者がある工程をはじめた直後に支援を入れることで,指示ではなく補佐されているという感覚が得られ,主体感に繋がる.
 本研究では,パターンが多く作業者が迷いやすい「特定の物体や場所に手を移動させる動作」を支援対象とし,これらの動作に対し,手をどこに運べばいいのかという「目的地」を支援することを想定する.このような支援を(1)や(2)の観点に沿って行うためには,工程の完了間際や開始直後といった適切な支援タイミングを推定する必要がある.
 支援タイミングの推定には,現在進行中の工程,およびその完了見込みを認識する必要がある.本手法では,我々が過去に提案したRGBD映像からのインタラクション認識手法を応用することで現在の工程を認識し,作業者の手の速度変化に関する推定を組み合わせることで,工程の完了見込みを認識する.提案したデザインに沿って支援を行った場合に,作業者の主体感にどのような影響を与えるのかについて実験を行う.

産業界への展開例・適用分野

 第4次産業革命により,生産方式として多品種少量生産が主流となってきている.多品種少量生産では,変則的な工程を少人数の作業者が担当するため,作業ミスが生じやすい.そこで,システムによる作業支援の重要性が高まっている.これまでの作業支援方式は,ミスの防止や効率化という観点を重視する一方で,作業者の主体感についてはあまり考慮されていなかった.
 実際の製品組み立てにおいて本手法を利用し,適切なタイミングで支援を行うことで,作業者の主体感を引き出すことができ,やりがいや達成感に繋がる.また,作業者が主体感をもって作業に臨むことで,人間ならではの臨機応変な状況判断や,作業の質にこだわる繊細さなどを作業に活かすことができる.

研究者

氏名 専攻 研究室 役職/学年
伊藤 佑真 知能情報学専攻 映像メディア分野 修士2回生
中村 裕一 学術情報メディアセンター ディジタルコンテンツ研究部門 マルチメディア情報研究分野 教授
近藤 一晃 学術情報メディアセンター ディジタルコンテンツ研究部門 マルチメディア情報研究分野 准教授
佐々木雄一 その他: その他 その他: その他