生体の細胞内では数千以上もの化学反応が、適切なタイミングで適切な量おこることにより、多様な機能が維持されている。代謝ネットワークは、細胞内の化学反応と化合物の関係をネットワークとして表現する。また各反応は遺伝子により制御されており、遺伝子と反応の関係はブール関数を用いたGPRネットワークで表現される。制約モデルは、代謝ネットワークとGPRネットワークの統合的な数理モデルであり、流束均衡解析(Flux balance analysis: FBA)に基づく高速なシミュレーションが可能であることが知られている。しかし所望の性質を持つ制約モデルのFBAに基づく設計はNP困難問題であり、遺伝子削除数が20を超える場合には、実用的なアルゴリズムが存在しないのが実情である。本研究では混合整数線形計画法に基づくアルゴリズムを開発し、ゲノムスケールの大腸菌の制約モデルによるシミュレーションを行った。その結果、既存手法では遺伝子削除戦略を計算できなかった多くの目的化合物に対して、遺伝子削除数が20~40の遺伝子削除戦略の計算に成功した。本研究の結果は、化石燃料に依存して環境負荷の高い、多くの有用物質に対する既存の製造過程を、環境負荷が低く安価な生物生産で代替するための重要な方法論となる可能性がある。
ビオチン、パントテン酸を含む400以上の有用物質の安価な生物生産へつながる。適用分野は代謝工学。
氏名 | 専攻 | 研究室 | 役職/学年 |
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田村 武幸 | 知能情報学専攻 | バイオ情報ネットワーク | 准教授 |