粒子スケールの流体・固体連成を考慮した粒子層内部流動化の並列計算

概要

砂地盤の液状化や,地下からの浸透流による堤防破壊等の問題では,土粒子と水流・水圧の相互作用に関するミクロなメカニズムの解明が重要である.そこで本研究では,底面から鉛直上昇水流を流入させた際に生じる礫(レキ)粒子層の内部流動化について,粒子スケールの流体・固体連成を考慮したマルチフェイズ並列計算を行い,実験結果と比較した.
計算では,四面体要素で形状を表現された約5,100個の礫粒子モデルを使用し,これらに働く流体力を流体の運動方程式中の圧力項と粘性項から計算する.また,礫粒子モデルの表面近傍に複数の接触判定球を配置し,礫粒子モデル間の接触力を個別要素法によって計算する.流体計算や上記の流体・粒子間,粒子・粒子間の相互作用計算は領域分割法に基づいて並列化されており,京都大学のスーパーコンピュータ(CRAY XC40, Intel Xeon Phi KNL, 68 cores/node, 1.4 GHz/node)を利用して,272並列で計算を行った.
得られた計算結果と実験を比較したところ,礫粒子層上面まで水流が貫通する過程や,貫通後における礫粒子層の内部流動化状態が両者でよく一致することを確認した.また,実験による計測が困難な粒子間隙の流速や圧力,各粒子に働く流体力などを可視化し,本数値計算によって現象のメカニズムを考察する上で有用なデータが得られることを確認した.

産業界への展開例・適用分野

本出展で扱う並列計算手法は,水流による礫粒子層の流動化の他にも,例えば粉体の製造や加工プロセスに見られる固気流動層にも適用可能である.粒子形状や粒子間の接触,粒子スケールの流体・固体連成を考慮した数値計算により,実験では計測が困難な粒子周りの流速や圧力分布,各粒子に働く流体力や接触力などが明らかになれば,現象のメカニズム解明や制御技術開発の一助となることが期待される.

研究者

氏名 専攻 研究室 役職/学年
牧 志峰 学術情報メディアセンター メディアコンピューティング研究分野 修士1回生
牛島 省 学術情報メディアセンター メディアコンピューティング研究分野 教授
鳥生 大祐 学術情報メディアセンター メディアコンピューティング研究分野 助教
大野 絢平 学術情報メディアセンター メディアコンピューティング研究分野 修士2回生

Web Site

http://www.compe.media.kyoto-u.ac.jp/