生理学の分野では,心拍間隔データの周波数分析や積率統計量に基づく自律神経機能の評価が知られている.また近年では,生体データのカオス解析が注目されている.本研究では,既存の自律神経活動指標に加え,カオスの定量化指標の一つであるカオス尺度を用いて,心拍間隔(RRI)データから自律神経の活動や,眠気・ストレスなどの生理状態を推定することを目指す.
暗算や論理パズルのタスクを用いた実験を行った結果,脳の活動状態が心拍変動に与える影響がカオス解析によってとらえられた.本結果は先行研究で提唱されている神経内臓統合モデルと整合するとともに,心拍変動のカオス性が脳や身体の状態を知る上で有力な情報であることを示唆する.
近年では,様々なウェアラブル生体センサ類が開発されており,継続的に生体データを取得することが可能になってきている.
小型の心拍センサで計測した心拍間隔(RRI)データを分析することによる,ストレスや疲労などの定量化や,自動車運転中の眠気を検知するドライバー眠気推定システムなどへの応用が期待される.
氏名 | 専攻 | 研究室 | 役職/学年 |
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真尾 朋行 | 数理工学専攻 | 物理統計学分野 | 博士3回生 |
梅野 健 | 数理工学専攻 | 物理統計学分野 | 教授 |